民事再生手続きと税法

1 法人が倒産手続きに入った場合、税務関係に影響が生じる場合も少なくありません。
法人の倒産といっても、そのまま事業を廃止する破産手続きや特別清算手続きがありますし、法人の事業を再建する民事再生法に基づく手続きもあります。

2 いずれの手続きについても、税法の知識だけでは対応できないと考えられますので、面倒くさいと思われる税理士先生は、ぜひ弁護士にお声がけください。

3 今回は、納税者側が、民事再生法に関する主張をしたので、話が複雑になったという例について、実例をカスタマイズしてお話いたします。

1 X社は、鋳造業を事業内容とする株式会社です。

2 X社は、今回の事業年度以前の事業年度において、棚卸資産の額を過大計上してきました。いわゆる粉飾決算です(以下、これまでに過大に計上していた額を、「過年度棚卸粉飾額」といいます)。

3 X社は、今回の事業年度において、過年度棚卸粉飾額を是正しようと考えました。
そして、X社は、これを「過年度棚卸資産廃棄損」と経理処理し、今回の事業年度の損益計算書に特別損失と計上して、本事業年度の損金の額に算入しました。

4 税務署長側は、この「過年度棚卸資産廃棄損」として経理処理された額を、本事業年度の損金の額に算入できないとして、X社に対して更正処分をしました。

1 そもそも、法人税法22条3項では、損金に算入される額について、「その事業年度における売上原価等、販売費、一般管理費その他の費用、及び資本等取引以外の取引にかかる損失の額」と定めています。

2 前述のように、過年度棚卸粉飾額は、今回の事業年度の以前に過大に棚卸資産を計上してきた結果の金額です。
つまり、「過年度棚卸資産廃棄損」は、本事業年度においてX社に発生したものではありません。

3 したがって、法人税法22条の規定からも明らかである通り、「過年度棚卸資産廃棄損」の額を、本事業年度の損金の額に算入することはできません。

1 ここまでの話であれば、シンプルだと思われますが、本件では、民事再生手続きが申し立てられていたので、話が複雑になりました。
つまり、本事業年度の最終日に、X社は、裁判所に民事再生法に基づく民事再生手続き開始の申し立てを行いました。
そして、X社は、民事再生法に基づいて、財産価額の評定を始めていました。
X社は、この点をもって、法人税法33条2項に基づき、評価換えにより、 「過年度棚卸資産廃棄損」の額も、本事業年度の損金の額に算入できると主張しました。

2 法人税法33条2項は、「法人の有する資産につき災害による著しい損傷などの事情により、当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合において、その法人が、当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、損金の額に算入する」という内容の規定です。
X社は、民事再生手続き開始の申立てによる民事再生法に基づく財産価額の評定という事情により、帳簿価格を下回ったので、棚卸資産の評価換えにより、「過年度棚卸資産廃棄損」と経理処理して、その全額について帳簿価額を減額し、特別損失として損益計算書に計上した以上、法人税法33条2項により、本事業年度の損金に算入できると主張したのです。

3 しかし、このX社の主張は、前提をはき違えているものと言わざるを得ません。
本件で問題となっているのは、これまでに過大に計上してきた過年度棚卸粉飾額です。
粉飾ですから、実際にその価額に相当する棚卸資産が、X社にあるわけではありません。
資産そのものが存在しないのに、それを「評価換え」することは、論理的に不可能です。X社の主張は、そもそも棚卸資産の計上が過大で、粉飾部分は架空の資産ということになるのに、その架空部分の評価換えをした、という矛盾したものになっています。

4 そこで、国税不服審判所も、X社の主張を認めず、「過年度棚卸資産廃棄損」を損金不算入とした更正処分を適法と判断したのです。

本件は、冷静にロジックを検討すれば、合理的な判断だと考えられます。
もっとも、民事再生法や破産法といった税法以外の法律が出てくると、苦手意識を持つ税理士先生もおられると思います。
その場合には、ぜひ、弁護士とのコラボをご検討ください。

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