保証協会への保証料の損金算入時期

1 以前このブログでも前払費用の経理処理方法について、ご紹介しました。
つまり、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける取引の場合、未だ提供されていない役務に対して支払われた対価(前払費用)については、その翌事業年度以降の費用(実際に役務が提供された時点の費用)になるので、支払った時点の事業年度の損益計算から除外される、という企業会計原則です。
このように、支払った金額が全額損金算入されるか否か、という重要な問題に直結するので、「一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける取引」に当たるか否かは、慎重に判断する必要があります。

2 今回は、保証協会へ支払った保証料が、いつの時点で、いくら損金算入されるか、について、実例をカスタマイズしてお話いたします。

1 X社は、不動産の売買及び仲介業を営む株式会社です。
X社は、Y銀行から融資を受ける際、Z信用保証協会との間で、信用保証委託契約を結びました(以下「本件信用保証」といいます)。
そして、X社は、Z信用保証協会に対し、本件信用保証に基づく信用保証料(以下「本件信用保証料」といいます)を支払い、Y銀行から融資を受けました。

2 X社は、本件信用保証料について、Z信用保証協会に支払った時点の事業年度において、全額をX社の損金に算入しました。

1 保証協会の保証のついた融資は、メジャーな融資ですので、詳しく説明する必要が無いかもしれません。
信用保証とは、保証協会があらかじめ金融機関との間で約定を取り決め、借入人が銀行から融資を受ける際に、その融資の債務を保証し、借入金が返済されない場合には、借入人に代わって、金融機関に代位弁済する制度です。

2 X社の認識としては、本件信用保証料について、Z信用保証協会が、Y銀行のX社に対する融資の保証を承諾することの対価として支払ったものであるというものでした。
つまり、X社としては、Z信用保証協会に本件信用保証料を支払わなければ、そもそもY銀行から融資を受けられませんでした。
そこで、X社としては、本件信用保証料について、X社が融資を受けるために支払った費用であり、Z信用保証協会が保証を承諾した時点で、承諾という役務は終了しているという認識のもと、その時点の事業年度において、本件信用保証料全額を損金に算入しました。

3 そして、税務署長側が、そもそも本件信用保証料の性質を誤認しているとして、上記のX社の損金算入を否認する更正処分をしたことから、バトルが始まりました。

1 この点、国税不服審判所は、本件信用保証が何のためになされたのか、という制度の趣旨・目的に立ち返って検討しました。

2 そもそも、本件信用保証は、Y銀行がX社に融資をするに当たり、X社が不払いになった場合にZ信用保証協会が代位弁済することにより、Y銀行の貸し倒れリスクを避ける目的でなされています。
つまり、Z信用保証協会としては、Y銀行のX社に対する融資がなされている期間中は、常に継続して、X社の不払いが起きた場合に代位弁済するというサービス(役務)を提供している、と評価されます。
Z社としては、保証を承諾しただけで役割を完了したわけではなく、Y銀行の融資期間中は、一貫・継続して、X社の信用を保証し、不払いの場合には代位弁済するという責任があります。
そして、Z信用保証協会としては、その責任の対価として、X社から本件信用保証料を取得しているのです。

3 以上の点から、国税不服審判所は、本件信用保証料について、「一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用」に当たると判断しました。

4 したがって、X社が、本件信用保証料を一括で全額支払ったとしても、その時点の事業年度の損金に算入されるのは、既に経過した保証期間に対応する部分の金額だけということになります。
そして、未だ経過していない保証期間に対応する部分の額については、未だ信用保証の役務(不払いになった時に代位弁済するサービス)が提供されていないので、本件信用保証料を支払った時点の事業年度の損金に算入できないという結論になります。

1 本件信用保証の制度趣旨や存在意味を考えれば、Z信用保証協会が保証を承諾した時点でZ信用保証協会の役務が終了するというX社のロジックには、やはり無理があると言えるでしょう。

2 論点について検討する際には、条文や制度のそもそもの趣旨や存在意味を正確に把握してロジックを組み立てることは、司法試験の受験の際に、嫌というほどさせられるのですが、税法の分野においても、同様のロジカルシンキングが必要とされるのです。

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