面会交流の調停調書と間接強制

1 子どもと離れて生活している親(以下「非監護親」といいます)は、子どもと面会交流をすることができます。
子どもを監護している親(以下「監護親」といいます)は、子どもの福祉を害する事情が無い限り、子どもと非監護親との面会交流を認める必要があります。

2 面会交流の実施について、親同士で協議が整わない場合、家庭裁判所の調停・審判手続きで面会交流の実施方法が決められます。

3 調停手続きで合意が成立した場合、調停調書が作成され、給付の意思が表示された調停調書は、執行力のある債務名義と同一の効力を持ちます。
では、調停手続きにおいて、面会交流の実施方法について合意した調停調書が作成された場合、それに違反したら強制執行できるのでしょうか。
この点、面会交流という事案の性質から、強制執行の方法は、義務を履行しない者に一定のお金を支払うよう命じる間接強制となります。
面会交流について合意した調停調書に基づいて間接強制ができるのかが、問題となります。

1 この点、裁判所は、面会交流をすることを定める調停が成立した場合において、調停調書に面会交流の日時または頻度、各回の面会交流時間の長さ、子どもの引き渡しの方法等が具体的に定められており、給付の内容が特定されているときは、調停調書に基づいて間接強制をすることができる、としています。

2 調停調書における記載が、監護親の給付内容を十分特定しているか、という点が問題となったケースについて、実例をカスタマイズしてお話しします。

1 非監護親Xと監護親Yとの間で、面会交流について、下記の内容の調停が成立し、調停調書が作成されました。

① Yは、Xに対し、子どもと2か月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)面会することを認める。ただし、最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。

② Yは、①に定める面会の開始時にA県B市のC通りの喫茶店の前で子どもをXに会わせ、Xは終了時間に同場所において長男をYに引き渡すことを当面の原則とする。ただし、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子どもの福祉に慎重に配慮して、XとYの間で協議して定める。

2 Xは、当該調停の内容に基づいて、子どもとの面会交流を求めましたが、Yがこれに応じませんでした。
そこで、Xが、当該調停の調書に基づいて、Yに対し、間接強制の決定をするよう申し立てたのです。

1 この点、裁判所は、Yが面会交流を認めるとしていても、面会交流の頻度について、2か月に1回程度としていること、面会交流時間の長さについて「最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする」としていること、さらには、「面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子どもの福祉に慎重に配慮して、XとYの間で協議して定める」と定めていることを重視しました。

2 そして、当該調停調書は、面会交流の大枠を定めたものであり、その具体的内容はXとYとの協議で定めることを予定しているので、間接強制が可能なほど給付の内容が特定されていないと判断し、間接強制決定をしませんでした。

1 以上の通り、調停で定めた事項がすべて法的に強制的に実行されるとは限りません。
間接強制という強制執行の方法に鑑みれば、義務者として、どのような行為をしなければお金の支払いを強制されるのか(いいかえれば、どのような行為をすれば、支払い義務を負わないのか)が明確に特定され具体的になっていないと、対処の方法がありません

2 面会交流の調停手続きにおいて、監護親が調停内容に違反した場合に間接強制をしたいと考える場合には、調停条項を検討する上で、監護親のなすべき行為が十分具体的に特定されているかについて、配慮する必要があるといえます。

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