別居期間と離婚の可否

1 婚姻関係を存続しがたい重大な事由が認められる場合には、裁判上の離婚が認められます(民法770条1項5号)。
一般的に、別居期間が長ければ、その分婚姻関係を存続しがたいと評価されやすくなります

2 もっとも、別居期間の長短は、一つの判断要素であり、これだけで裁判上の離婚の可否が判断されるわけではありません。
この点が問題となったケースについて、実例をカスタマイズしてお話しします。

1 夫Xと妻Yは、平成14年に婚姻しましたが、平成18年ころから不仲になり言い争いが増え、平成23年に、Yが子を連れて別居するようになりました。

2 その後も別居が続き、裁判になるまで、別居期間が4年10か月余りに及びました。

3 Yは、完全にXと婚姻関係を継続する意思を失っていたことから、Xを被告として離婚請求訴訟を提起しました。

1 XとYの同居期間は、約5年です。
それに対して、別居期間は、裁判の時点で4年10か月余りでした。
裁判所は、この別居期間の長さについて、それ自体として、XとYの婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえると判断しました。

2 この点、4年10か月余りの別居期間があれば、常に婚姻関係破綻と評価されるとは限らないと考えられる点に留意する必要があります。
本件の場合、XとYとの同居期間が約5年であり、一方、別居期間が4年10か月余りだったという基礎事情から、別居期間の長さが婚姻関係破綻を基礎づける事情と判断されました。
婚姻関係破綻と評価されるかは、同居期間と別居期間のバランスが考慮されるものといえます。

1 また、婚姻関係が破綻していると評価されるか否かは、単に別居期間の長さだけで判断されるものではありません。

2 本件では、Xが、完全にYとの婚姻を続ける意思を失っており、今後別居が解消される見込みがありませんでした。

3 また、Yとしても、離婚したくないのであれば、夫婦関係の修復に向けた具体的な働きかけがあってしかるべきです。
しかし、Yは、そのような働きかけをせず、漫然と別居を続けました。
このことから、裁判所としては、Yが、婚姻関係を続けたいという強い意思を持っていないのではないかという推察をしたのです。

4 本件において、同居期間と比較して別居期間が長く、Xが完全に婚姻意思を喪失しており、かつ、Yも夫婦関係修復のための働きかけをしておらず婚姻意思を強く持っているとは窺われないことから、XとYの婚姻関係はすでに破綻しており、回復の見込みがないと判断され、裁判上の離婚が認められたのです。

1 婚姻関係を続けたいと考える配偶者としては、単に漫然と別居を継続するというのでは、上記の通り、修復のための働きかけをしておらず、強い婚姻意思を持っていないと推察されてしまいます。

2 その意味で、例えば誕生日や結婚記念日に手紙やプレゼントを贈るなど、修復のための働きかけをしていると外形的に判断できるような対応をする必要があると考えられます。

3 また、別居している配偶者に婚姻費用を支払う義務があるのに、それを支払わなかったというケースは、それ自体、相手方配偶者の生活を経済的に脅かすものであり、婚姻関係の修復とは真逆の対応といえます。これも、婚姻関係破綻を基礎づける大きな要因といえます。
婚姻関係を継続したいのであれば、約定の婚姻費用は支払い続ける必要があります。

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