内縁と財産分与の相続



1 今回は、内縁関係解消の財産分与のお話です。

2 前提として、令和6年に、財産分与に関する民法の規定が改正され、令和8年5月23日までに施行されます。

改正後の条文を記載致します

3 第768条

1項 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2項 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。

3項 前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。




1 このように、法律上の夫婦が離婚した場合には、夫婦生活で形成した共有財産について、最終的には家庭裁判所が財産分与の内容を決定します。

2 内縁関係解消の場合も、財産分与請求が認められています。
しかし、内縁関係の場合、相続が認められていないので、内縁関係を解消した後に当事者が死亡した場合に、法律上の問題が発生します。

この点について、実例をカスタマイズしてお話いたします。

3 Xは、Aの内縁の妻でした。XとAは、昭和57年ころから平成18年7月頃まで内縁関係にありましたが、平成18年7月に別居し、内縁関係を解消しました。

Xは、平成19年11月に、Aを相手方として、家庭裁判所に対して、内縁期間中の共有財産に関し、財産分与調停を提起しました。

そして、調停が不成立となり、審判手続きに移行した平成21年7月にAが死亡し、その相続人であるYが審判手続きを引き継ぎました。

4 Yは、XがAの内縁の妻であり、Aから相続を受ける立場ではないので、Aが死亡した以上、XがAとの共有財産について、財産分与請求することはできないと主張し、争点になりました。




1 この点、Xは、Aの生前に既に内縁関係を解消しており、Aを相手方として財産分与調停を起こしていました。

2 この時点において、Xが、財産分与としてどの財産を取得するかは決まっていませんでした。
しかし、Xとしては、Aの生前中に家庭裁判所に調停を起こし、既に、Aに対して財産分与請求するという意思を明確に表示していました。
つまり、Xは、Aの生前に、Aに対する財産分与請求権を現実的に取得しており、Aとしては、いずれにせよ財産分与しなければならない義務が実際に発生していました。

3 そして、Yは、Aの相続人としてAの義務を引き継ぐ立場にあるので、Xに対して、Aが分与すべきだった共有財産を分与しなければならないという結論になります。



1 本件のポイントは、Xが、Aの生前に、Aを相手方として財産分与の調停を起こしていたという点と考えられます。
Xが財産分与調停を起こし、請求の意思を明確に示したことにより、XのAに対する財産分与請求権が具体的な金銭債権として発生し、その後Aが死亡したので、Aの金銭債務が相続人であるYに引き継がれたということになります。

2 その意味で、財産分与の請求をするのであれば、できる限り早いタイミングで、調停など公的・客観的な形で、請求の意思を明確に表示することが大切といえます。

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